2017年度2学期第8回 HIVの感染を拡大させないために
2017-12-14
(土器屋希衣さん/長井菜摘さんからの希望により,名前と写真を掲載します。)
英語コミュニケーションも今日で8回目。さまざまな学部から4人が集まりました。今回は趣向を変えて,医学部看護学科(4年生)の土器屋希衣さん/長井菜摘さんから「HIVの感染を拡大させないために,私たちにできることは何だろう」というテーマで話をしてもらいました。まずはHIV自体の知識/予防法を確認したうえで,国際的な視点から,UNIAIDsの取り組みを紹介します。HIVという病気の知識を広めることを目的としたポスターによる周知の徹底と,予防法については特に子どもと女性を対象にしたセラピーを粘り強く行うことで,2014年から2016年にかけて両者の新規感染率が劇的に改善した事例を,データを交えて話します。その後,日本国内の状況を見ていきます。2人を司会役に「世界的に見れば2005年を境にHIVの新規感染者数は減っています。一方で,日本国内の感染者数は同年にピークを迎えたあとも横ばいで推移しています。みなさんは,なぜそうなっていると思いますか?」という問いを,参加者全員で考えていきます。「HIVテストを受けるのがまだ一般化していない。潜伏期間があることを考えれば,今後数年間は,新規感染者の数は減らないのでは」という分析から,「日本では法整備が遅れていることが原因かもしれない。たとえばスウェーデンには,HIVポジティブであることをパートナーに教える義務がある。知っているのにそれを隠したら罪に問われることがある」という意見もあり,また「日本では,性について話すのが一種のタブーとされている。それが病識についての周知が進まない一因になっているのでは」という鋭い指摘もありました。それらの意見を受けて,さらに「もし自分がHIVに感染したら,それをパートナーに言えるか」を考えていきます。その問いに対して参加者の意見は分かれます。「パートナーのことを考えたら,やはり正直に言うべきだ」という意見がある一方で,「いや,それが倫理的に正しいとわかっていても,それによって失うものの大きさを考えると,相手に本当のことを言えるかどうか,正直に言って自信はないです」という意見もありました。これまでの議論を受けて,最後に司会の2人がまとめをします。「HIVの問題は,医学的な問題であるだけではなく,倫理的な問題でもあります。自分がHIVに感染していると知っていたら,もちろんパートナーにそれを伝えるべきです。ただ,HIVについての正しい病識が周知されていないという現状がある中で,それを認めることはとても勇気がいることも,また事実です。治療薬の進歩によって感染後死亡率が改善しているにもかかわらず,病識があっても,周囲の目を気にして治療に踏み切れない場合もあります。それらを考えたとき,まずはHIVという病気自体の知識・予防法・感染経路・初期症状・感染後の対処法などの正確な知識を,教育機関と連携して,周知徹底する取り組みを続けていくことが,将来的に新規感染者数を減らす唯一の方法だと考えます。」 (林)
英語コミュニケーションも今日で8回目。さまざまな学部から4人が集まりました。今回は趣向を変えて,医学部看護学科(4年生)の土器屋希衣さん/長井菜摘さんから「HIVの感染を拡大させないために,私たちにできることは何だろう」というテーマで話をしてもらいました。まずはHIV自体の知識/予防法を確認したうえで,国際的な視点から,UNIAIDsの取り組みを紹介します。HIVという病気の知識を広めることを目的としたポスターによる周知の徹底と,予防法については特に子どもと女性を対象にしたセラピーを粘り強く行うことで,2014年から2016年にかけて両者の新規感染率が劇的に改善した事例を,データを交えて話します。その後,日本国内の状況を見ていきます。2人を司会役に「世界的に見れば2005年を境にHIVの新規感染者数は減っています。一方で,日本国内の感染者数は同年にピークを迎えたあとも横ばいで推移しています。みなさんは,なぜそうなっていると思いますか?」という問いを,参加者全員で考えていきます。「HIVテストを受けるのがまだ一般化していない。潜伏期間があることを考えれば,今後数年間は,新規感染者の数は減らないのでは」という分析から,「日本では法整備が遅れていることが原因かもしれない。たとえばスウェーデンには,HIVポジティブであることをパートナーに教える義務がある。知っているのにそれを隠したら罪に問われることがある」という意見もあり,また「日本では,性について話すのが一種のタブーとされている。それが病識についての周知が進まない一因になっているのでは」という鋭い指摘もありました。それらの意見を受けて,さらに「もし自分がHIVに感染したら,それをパートナーに言えるか」を考えていきます。その問いに対して参加者の意見は分かれます。「パートナーのことを考えたら,やはり正直に言うべきだ」という意見がある一方で,「いや,それが倫理的に正しいとわかっていても,それによって失うものの大きさを考えると,相手に本当のことを言えるかどうか,正直に言って自信はないです」という意見もありました。これまでの議論を受けて,最後に司会の2人がまとめをします。「HIVの問題は,医学的な問題であるだけではなく,倫理的な問題でもあります。自分がHIVに感染していると知っていたら,もちろんパートナーにそれを伝えるべきです。ただ,HIVについての正しい病識が周知されていないという現状がある中で,それを認めることはとても勇気がいることも,また事実です。治療薬の進歩によって感染後死亡率が改善しているにもかかわらず,病識があっても,周囲の目を気にして治療に踏み切れない場合もあります。それらを考えたとき,まずはHIVという病気自体の知識・予防法・感染経路・初期症状・感染後の対処法などの正確な知識を,教育機関と連携して,周知徹底する取り組みを続けていくことが,将来的に新規感染者数を減らす唯一の方法だと考えます。」 (林)